広告映像ならではの仕事の進め方
昔テレビ業界から広告業界に来た時「同じ映像だし、広告の映像もテレビの映像も本質的に違いはない。」と思っていた。確かに何かを伝える仕事であるという事に変わりはない。
だが広告業界にやってきて10年以上経って思うのは「同じ映像でも全く違う仕事」だということ。
第一に我々はクライアントの物を作っている。そのためには、ディレクターは自分が思い描いた絵(コンテ)でクライアントを含めた周りの人を動かし、高品質のキッチリした絵を撮って仕上げて行かなばならない。
だからこそディレクターは演出に集中するべきで、絵心がないと話にならない。そして、プロデューサーはPMと一体になって演出を含めた調整をしながら予算を管理していなねばならない。毎回要件が全く異なり、形がないわけだから。
そのように仕事の進め方も全く異なるから制作体制も異なる。
以前所属していた大手制作会社が作ったプロデューサーシステムに、広告業界に来たばかりの時は疑問を感じていたものだが、今はとても合理的な方法だったと理解できる。
最も昔より予算が縮小している中で、それが絶対だとも思ってはいない。
それを証明するように私はP兼Dという立場で仕事の仕方をすることも多い。
ただし、それができるのはチーフクラスのPMがいてからこそというのもある。でないと、あまりにも膨大な仕事量で死んでしまう。
テレビ業界のプロダクションにいた人との間には、広告映像ならではの体制的な話や仕事の進め方の部分で、必ずと言っていいほどギャップが生じる。
そのギャプを埋めるためには対話と、相手に広告業界の典型的な仕事の進め方を身をもって体験してもらうしかないと思っている。
※ちなみに何故テレビプロダクションという言い方にしたかというと、テレビ局の制作の人は、「箱を作る」仕事をした上でテレビプロダクションに仕事を振るから、ある程度共通意識はあるであろうという、希望的観測がもてるからである。
そしてCM系の映像制作業界ならではの生存競争の熾烈さは、仕事を与えられる側から与える側にならない限り分からないことでもある。そして、代理店の立場に立っていたことがあるからこそ、どこをどう評価されるかがある程度分かる。だから私の場合は必要以上に、そこを気にしながら仕事を進める場合が多いのである。
最もどの業界であれ、ディレクターであれプロデューサーであれ、自分指名で仕事を取れる人であれば、どの業界でもやっていけるだろう。
ただし、それが本当にできている人は、広く見渡してもほんの一握りの人であるということも理解せねばならない。
殆どの人は会社の名前や社内の人達に生かされているのだから。
※写真は自分の最近の演出案件の撮影後のスタジオ風景